ニューロフォリア 金の少年、青い青年。
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金の少年、青い青年。

GP3のみささんとの合同誌Credor.
収録する予定だったけど、うれしい急ページ増でもれちゃったお話。
スティッキィ・フィンガーズとゴールド・エクスペリエンスのお話。
スタンドは逆っぽいけどジョルブ。
   1

 彼の能力は無生物に自ら発する生命エネルギーを与え、かつその細胞を変化させて思うまま、この地球上に住む生物に創り替える能力だ。この世界の創造主たる神をもおそれぬ、その罪深い行為を、単なる粘土遊びとしか思わないかのように平気で行う。
 それはあまりに無邪気な冒涜。
 生まれた瞬間から当たり前のように備わっていた能力なので、それがなぜ備わっているのかを疑問に思わないのだろう。
 今では常識のように語られるダーウィンの進化論でさえ冒涜と言われる世の中じゃ、彼が存在するということ自体が冒涜なのかもしれない。そんなことを考えながら顎に手をついて、じっと眺めていた。
 スティッキィ・フィンガーズは彼を観察することを好んだ。ちょろちょろとジョルノの周りを飛んでみては、通りがかりの生き物へ次々と興味を移す。レストランの食事の最中に水槽の中の生魚を興味深げに見入っていたところ、それを連れて厨房に入るコックを追い出した時は驚いた。あんなに好奇心旺盛では、知らない間に射程外から出て行ってしまうのではないかとおそれた。
なんだか放っておけなくて彼を止めたが、ものすごく不満そうな顔をされた。よけいなお世話だというわけだ。
……困った話だ。彼は自分を子どもだと認識していないのだから。
 しかし、キッチンまで入ってしまえば射程外。どうせついていくことはできなかったのだけど……このフワフワ飛び回る金の少年なら、あっという間にそれも超えて、独り立ちしてしまうんじゃないかとおそれてしまう。
とりあえずなんだか危なっかしい上に不思議な出来事ばかり起こす彼を、自分の射程外から出してはいけないと、なんとなくそれを使命のように思っていた。
 スティッキィ・フィンガーズは首を傾げる。彼はジョルノと共に知識を蓄えているはずだし、知恵がないわけでもない。
 細い腕、細い脚、その体に対して少し頭は大きめで……まさしく少年の体型だ。
 しかし子ども扱いをして注意をすると怒るのだ。彼には子どもだという意識はない。彼は自分の意志で行動することができるわけだが……どうにも、十五才にしては大人びているジョルノ本人と比べると、もっと幼い印象も受ける。
その上、何せこの金色の少年はジョルノが嫌う、無駄な行動ばかりをするからだ。
ゴールド・エクスペリエンスはジョルノ・ジョバァーナのスタンドだ。どうにもこうにも、それがイコールで結ばれない。本人はそれに気づいているのだろうか。
 魚を手にとって、勝手にその細胞をこねようとしだした時はどうしようかと思ったが、やはり生物を変質させることは出来ないらしく、バチャバチャと手の中で暴れる魚を、じっと見ているしかできなかった。
 妙な行動を起こす彼の側によると、その黄金の瞳でこちらを見上げてきた。何かやってほしいことがあるようだが、かといって、私にできることと言えばただ一つ。ジッパーをつけて
……繋げるか分断するかの二択しかなかった。
 彼の願いのままに拳をたたき込み、頭、胴体、しっぽの三等分にした。その少年が輪切りになった魚を見て何をしようと言うのか興味津々でながめた。理由はわからないけれど、どうやらリクエスト通りにできていたらしく、うれしそうに切り身になった魚を見ていた。
 一瞬恐ろしい考えがよぎる。生物ではこねることができないから、わざわざ生命力を絶ち、「物質」に変えようと思いついたのだろうかと。しかし、少年はただ脈打ち、血を滴らせる切り口をながめて、うれしそうにほほえんでいた。
 しかし、今度は急いでこの魚を元通りにしてくれと、三等分の魚を差し出された。命令通りに魚を戻し、水槽へ返してやる。刻まれたことが、まるでウソだったように、元気に魚は泳ぎだした。
 このことで少しだけわかった。彼は分別がない子どもではないと言うこと、そして、その行動には何かしら理由があるということ。
 ……だとすれば、先ほどの魚の出来事はいったいなんだったのか。
 私は自分の仕事はきっちりやり通す。それに誇りを持っている。大切な者を悪から守ること、それが仕事だとブチャラティの心が言っている。そして、ブチャラティにとってはジョルノが、そして、その精神の産物である私にとってはジョルノの精神であるゴールド・エクスペリエンスが大切だと思っていた。

   2

 彼は自然の中にある生物に興味を持つ。ジョルノはそんなものを気にしている余裕は無いというように、ただ真っ直ぐに、いつも足早に目的に向かうが、ゴールド・エクスペリエンスはといえば、花々が咲き誇る花壇や、そこに軽やかに舞う蝶や、かすかに聞こえる鳥の鳴き声に耳を傾け、鳥と共に飛んでいこうとする。
 もちろん戦いになればきちんとジョルノの命令に従うのだが……なんというか……普段は集中力散漫な印象を受けた。いつかは痛い目に遭うんじゃないか。そう考えるとひやひやして、ついつい、ふよふよと飛んで行く彼へ視線を投げかけてしまう。
 その繊細な手が蝶に触れ、鳥に捧げるようにのばされ、小さなテントウ虫を目でおい……壁にぶつかるわけがないのにぶつかってしまうんじゃあないかとソワソワしたり、いつの間にかそんな彼ばかりを視線で追ってしまう自分がいた。
 そして、ついに気付いたのだ。彼が何をしているのかを。それは、何かを自らの手で変質させようとするのではなく、そこにある生命そのものに対する尊敬の心と慈しみから来る観察行為だったのだと。
道ばたに咲く小さな花にさえ彼は慈しみの視線を向ける。触れようとする。机上の空論で終わらせようとはしない。その手には地球が生んだ生命のエネルギーが感じられているのだろう。
 もしかすると彼こそはジョルノがやってみたかったことの塊なのかもしれない。常に精神を張りつめ、目的にしか向かわないジョルノ・ジョバァーナ、でもゴールド・エクスペリエンスは彼の好奇心の固まりであり、生命尊敬の心そのものだ。
 それに気づいた瞬間、自然と笑みが浮かんでしまった。生命エネルギーを使うスタンドだからこそ、その自分を形成する生命エネルギーを理解しようとしているのだろう。そうすることが、彼の生命賛歌なのだろう……。
 そうして見とれているとまた、手のひらに捕まえた蝶をジッパーで裂いてくれと頼まれた。少しいぶかしく思ったが、言うとおりにすると、またしばらく興味深げに観察した後に、蝶を戻してくれと言われ、手のひらで再生した蝶に生命エネルギーを返して再び空へと放った。
 しかし皮肉だなと思った。彼が一番知りたいと望む生命エネルギーとは、自分そのものであり、生命エネルギーで成り立っている存在なのに、それを一番理解したいと願っているのが
……このスタンドなのだから。
 思わずほほえむ。そんなとてつもなく大きなことを背負っているくせに、それをちっとも大きなことだと思ってもない彼が、愛おしいと。彼の探求はいつまでたっても終わらないのだろう。私の力で役に立つというのなら、喜んで力を貸そう、そう思う。
 彼の純粋な好奇心が満たされることはないだろうけれど、それが突き抜けた瞬間、どうなるのだろうか……私はそんな彼に興味と尊敬を持っていた。

   3

 ゴールド・エクスペリエンスは、彼をうっとうしいと思っていた。自分と違って筋骨隆々な体、なんだかいつも斜に見たような態度をとっている。しかもメットを目深にかぶっているから、感情が読みにくい。
自分を見下しているのかな、と思いきや、ふとした瞬間に……やさしげな笑みを浮かべているようにも見えた。いや、そのくちびるはゴールド・エクスペリエンスを見るときにはなぜか、いつも笑みを浮かべているのだ。
 観察が大好きなはずのゴールド・エクスペリエンスは観察されることが嫌いだったのだ、と彼のおかげで気付くことになる。ジョルノは早くブチャラティから離れるべきだとも思った。そうすればこのうっとうしい観察からも逃れられるのに。でも、ジョルノがブチャラティに寄せる信頼が伝わって来るものだから彼が信頼すべきスタンドであることだけは、よく解っていた。
 彼は口うるさく叱るわけでもないし、拳を振りあげるわけでもない。ただ彼は黙って、ゴールド・エクスペリエンスをほほえみながら観察するのだ。少し気持ち悪いとも思っていたが、それより勝るのは生命への好奇心だった。
花の上に止まり、羽を開け閉じするだけの、ほんのささいな仕草ですら美しい蝶も、命を失えば色も霞み、体はこわばって、蟻やウイルス、分解者たちの手によって粉々に砕け散り、朽ちて土となる。生命を失って変化した物は美しくない。その生命力の抜け殻、朽ちた物体を見るとひどく悲しくなった。
 ゴールド・エクスペリエンスは「死」が怖い。生命エネルギーがつきるということがおそろしかった。
 しかし、彼には力がある。生命のない物体でも、触れれば生物へと変化させることができる。それがうれしくて仕方がなかった。人間たちにとって、それはたいへん目立つ能力らしく、ジョルノはあまりゴールド・エクスペリエンスの好き勝手に目をつぶってはくれなかった。彼はスティッキィ・フィンガーズと違い、叱るし、時にはコツンと頭を小突くことさえある。
でも、ゴールド・エクスペリエンスは自由である。
 ジョルノが旅先で仲間を守りたいという思いを強くするほどに、ゴールド・エクスペリエンスの生命への興味は深くなった。好奇心はいやました。
 ある日思いつきで、じっと見守り続けるスティッキィ・フィンガーズにお願いをした。レストランで生きた魚を三等分に輪切りにしてもらった。コックがその魚の生命を奪うその瞬間を見ようかとも思ったが、やはり魚であれ、かわいそうだと思うのだ。
 ところがスティッキィ・フィンガーズの不思議なジッパーときたら、残酷なコックの包丁とは違って、魚の生命エネルギーの流れを妨げもせずに輪切りにし、その筋肉の躍動をそのまま目の前に見せてくれるのだ。
 しかし、スティッキィ・フィンガーズはゴールド・エクスペリエンスが魚を戻してほしいとお願いすると、不思議な顔をした。きっと彼の仕事は輪切りにするところまでだと思っていたらしい。
 彼は自分の能力がどんなに素晴らしいかが、わかっていないのかもしれない。その能力をうまく使えば、いろんな生物を救えるという風に考えたことがないのかもしれない。でも、不思議と彼からは「やさしさ」を感じた。だから、そのことに早く気づくべきだと思う。
 その「やさしさ」とは何なのかと疑問に思い、彼をじっと観察したこともある。普段は姿さえ見せずに、じっとそこにいて、ブチャラティの危機にさえ積極的には動かない。……動かないことがやさしさ、とは何だろう?と。
 しかし、そんな彼と過ごすうちに、ほんの少し理解できた気がした。彼はゴールド・エクスペリエンスを理解しようとしているのだ。ジョルノでさえも信頼してくれないようなことでも、スティッキィ・フィンガーズはそこに何の思いがあるのだろうかと観察し、理解しようとしてくれた。そして、彼はどんな願いも断らない。
 最近は彼に頭をなでられることが嫌ではなくなった。彼は最低限にしか手を貸さない。それが彼のゴールド・エクスペリエンスへの信頼であり、「やさしさ」から来るものなのだと、なんとなく理解できたからだ。
 最近はジッパーで分断した生物を見るゴールド・エクスペリエンスの横でいっしょに観察をすることもある。弱った生物には感謝の心を込めて生命エネルギーを注入する。
 教えてくれてありがとう。君のすばらしさが少しだけわかったよ。そう思った時、なぜか、ふとスティッキィ・フィンガーズと視線が合ったような気がした。

 そうか、理解することが「やさしさ」なんだ。
 守りたいと思うことが「やさしさ」なんだ。

 ……もしかすると、このスタンド二体は、似ていないようで、似ているのかもしれない。まるで、彼らの本体のように!

――fine

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大幸妄太郎

Author:大幸妄太郎
ペル2(達淳)・ドリフターズ(とよいち)に
メロメロ多幸症の妄太郎です。女装・SMが好き。
ハッピーエンド主義者。
サークル名:ニューロフォリア
通販ページ:http://www.chalema.com/book/newrophoria/
メール:mohtaro_2ew6phoria★hotmail.co.jp
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